堀田圭江子/音楽療法セラピスト®、音楽療法士、産業カウンセラー
堀田圭江子
洗足学園音楽大学 声楽家卒業。高校教員を経て音楽療法士となる。
25年以上の音楽療法の臨床経験を生かし「音楽療法セラピスト®養成講座」を主宰。
音楽療法セラピストを志す後進の育成にもあたっている。

こんにちは、堀田です。

本日は「音楽療法で記録が教えてくれるヒント」についてお話しをしたいと思います。

あるクライアントさんのお話しです。

その方は特別養護老人ホームに入所されている90歳代の女性です。
診断名は認知症です。

今の彼女は、ほとんど発語がなく、
コミュニケーションはアイコンタクトとうなづく程度。

普段は食堂にいて、食事の他の時間は自分の席のテーブルや
椅子を意味もなく叩き続けています。
または、自室にて横になっている毎日です。

音楽療法の時間では
会話はないものの、指示は理解できていて、
特に太鼓を叩くプログラムには積極的に参加します。

そのクライアントさん
アイコンタクトはしっかりとれるし、
本人の意思もわかるのだけれども
なぜかお話しはしてくれないのです。

どうしてなのか?
その原因を考えておりました。

そんなクライアントさんですが、
セッションに参加してかれこれ7年以上になります。

先日久しぶりに
7年前からの記録を引っぱりだして読み返してみたところ

忘れていたいろいろなことを思い出しました。

それと同時に、
クライアントさんを理解するうえでヒントを見つけることができました。

実はそのクライアントさんは
現在はほぼ発語がないのですが、
7年前は自己紹介でフルネームを言っていました。

また、歌も7年前は歌っていました。

それどころか、
他のメンバーが名前を言えなかったりしていると
「早く言わないかなあ」と独り言まで言っていたのです。

会話がちゃんと成立していたのです。

しかし、
その1年後入退院を繰り返しました

そして
老人ホームに帰ってきてから、手の震えやなどが表出しだし
歌を歌わなくなりました。

時を同じくして
おなか全体が奇妙に震えだす症状も出て、発熱や体調不良も続き
発語が減り、顔の表情も乏しくなってきました。

その頃
 音楽療法担当の職員が異動になり、担当者が交替していました。

なるほど。

上記の記録から
発語が減っていった原因のヒントが浮かび上がってきました。

1つめは、「入退院を繰り返したこと」

入院中は臥床している時間が長いため、人とのコミュニケーションも不足します。
食事の時やトイレの時以外会話がなかったかもしれません。
そのように話す必要がない環境におかれていたのではないでしょうか。

また、入院中は運動量も少ないですし、自力でできることがあっても
転倒などの危険防止のため自力での行動は制限され、
さらにできることは少なくなっていたかもしれません。

それでは脳への刺激も少なくなるでしょう。

2つめは、「音楽療法での担当職員が異動になったこと」

そのクライアントさんは、
職員や他の人誰とでも仲良くなれる性格ではありませんでした。

ある特定の職員との信頼関係が強く構築されており、
その職員が音楽療法の担当にもなったため
積極的にセッションに参加できたのではないかと思われます。

しかし、
退院してきたらその職員ではなく他の職員に交替しており、
ショックだったのではないでしょうか。

この2つのことは
記録をつけていたからこそわかったことです。

今更ながら
記録って大事だなって思います。

 

さて
せっかく出てきたヒントは
実際にクライアントさんに発語を促すためのアプローチに活用しない手はありません。

その
具体的なアプローチは、、、、、

次回お話ししたいと思います!

次回をお楽しみに。

では、今日はこのへんで。

音楽療法セラピスト 堀田圭江子

追伸:
今日、お話したように介護現場での「記録」はとっても大切な情報、
そしてその記録を基に「評価」することで、次に何をすれば良いのかが見えてきます。

しかし、
なにを記録しどのように評価すれば良いのかが今ひとつだなと感じている場合は、
音楽療法セラピスト養成講座の「記録と評価」を活用して下さいね。