堀田圭江子/音楽療法セラピスト®、音楽療法士、産業カウンセラー
堀田圭江子
洗足学園音楽大学 声楽家卒業。高校教員を経て音楽療法士となる。
25年以上の音楽療法の臨床経験を生かし「音楽療法セラピスト®養成講座」を主宰。
音楽療法セラピストを志す後進の育成にもあたっている。

さて本日は「本当の援助をするためには、、、」というお話しです。

先日
高次脳機能障がいの方々との音楽療法のセッションをしてきました。

その日
ある一人の男性がとても眠そうな表情だったので
私は「今日は調子が悪いですか?」と聞きました。

その方Aさんとします。

Aさんは
「調子は悪くないのですが、今朝9時に飲む薬を11時に飲んでしまいました。」
と答えました。

セッションは15時からなので
薬を飲んでからはしばらくたっていましたが
いつもよりも明らかに眠そうでした。

私は
「わかりました。眠そうに見えますので、
セッション中は無理をしないでくださいね。」

と言いました。

するとAさんは
「先生、無理しないって、どうなったら無理することで、
どうなっていたら無理しないことですか?」

と聞いてきたのです。

さらに
「みんな無理しないでと言ってくれますが、
それがわかれば僕は苦労してないんです。」
と続きました。

私はハッとしました。
「確かにそうだ!そうだよね。」

それで私は
「具体的に言わないとわからないよね。ごめん。ごめん。」

そして
「じゃあ、セッション中に私から見て、
いつもと違うなあと思ったらその時に伝えるね。それでいい?」

といいました。

彼は
「はい、お願いします。」

といい、セッションは始まりました。

音楽療法のセッション開始から15分経過した頃

仰げば尊しを皆で歌いその後に彼に質問しました。
「一番思い出に残っている卒業式は、いつの卒業式ですか?」

そうしましたら
彼は、えっとえっとと考えていましたが
なかなか言葉が出てこず、数分がたちました。

その時です。

私は
「今が、無理してる時です。
頭の中がフル回転になっているようです。ちょっと休みましょう。」

といいました。

彼は
「あ、はい。ありがとうございます。」

といって座ったまま目を閉じて頭をクールダウンさせていました。

その対処が功を奏したのか
その日のセッションは発作を起こさずに
無事終わりました。

実は彼、
交通事故の後遺症でてんかん発作を持っており
お薬で発作をコントロールしていますが
薬を飲むタイミングがずれたり、ストレスが過多になると
発作をおこしやすくなるのです。

今回は
薬を飲むタイミングがずれたためと
(後から知ったのですが)昨日遊びすぎて疲労があったことで
発作を起こしやすい状態だったのです。

それにしても
今回の彼の言葉はとても大きいことを私に気づかせてくれました。

まず
セッション前に私が彼に
「無理しないでね」と安易にかけた言葉は彼の言うように助けにはなっていませんでした。

そして
助けどころか、彼に対して混乱を招き負荷を与えることになっていたかもしれません。

本当に反省です。

私は今までもこのようなことをしていたかもしれないなあと
思いました。

このことから、、、

⚫︎たとえ良かれと思って、また、相手を気遣ってかけた言葉でも
相手にとって助けにならないこともあること

また
⚫︎自分から見て、大変そうに見えたり辛そうに見えても
相手はそれほど困ってないこともある

要するに
「安易に助け舟をださず、まず相手に自分の助けが必要か否かを確認し
もし助けが必要なら出動すること」

を彼から学びました。

サポートは、本当に相手を正しく理解することから始まるんですね。

ということで
これからも自分の勝手な思い込みを捨てながら
クライアントさんを理解しセッションしていこうと
思っている次第です。

このお話が
あなたの何かの参考になれば幸いです。

では
今日はこのへんで。

音楽療法セラピスト 堀田圭江子

 

追伸:
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