堀田圭江子/音楽療法セラピスト®、音楽療法士、産業カウンセラー
堀田圭江子
洗足学園音楽大学 声楽家卒業。高校教員を経て音楽療法士となる。
25年以上の音楽療法の臨床経験を生かし「音楽療法セラピスト®養成講座」を主宰。
音楽療法セラピストを志す後進の育成にもあたっている。

さて、
前回は「聞く」ことについてお話しました。
おかげさまで、たくさんの方から感想をいただきとても嬉しかったです。
ありがとうございます。

普段、何も考えなくやっている行動も
少し立ち止まって考えてみると、学ぶことも多いにありますよね。

今日は「役割」についてお話します。
私の父の話で恐縮なんですが、ちょっと聞いてくださいね。

うちの父は75才です。
とても元気です。

そして、
記憶力が抜群です。

例えば、
私が父に:「昨日スーパーで会ったあの人なんていう名前だっけ?」と聞く。

父は:「田中さんでしょう」と即答してきます。
私は:「あ、そうそう、よくすぐに思い出せるね」って言うと、
父は:「すぐ、出るでしょう、そんなの」って言います。

いやいや、顔は思い出すけど、名前は出ないです(笑)。

また、
私が:「田中さんの実家って何してた?」と聞くと
父が:「田中さんのお父さんは駅前の印刷所で働いてたし、
お母さんは学校の給食のおばさんだよ」って即答。

えー、よく覚えているよねー。っていつも関心する私。

という具合に、うちの父は私より記憶力がよいのです。
でもそれには理由があります。

彼はもう十数年、町内会長を努めております。

町内会長の大きなお仕事は(うちの田舎では)、葬儀委員長を務めることなんです。

葬儀の際、故人の紹介をしますが,うちの父はカンペを見ません。
前夜に入手したデーターを暗記し、それを一字一句間違えることなく紹介します。

父が言うには「流れるようなスピーチ」じゃないとダメらしいですけど(笑)。

それを一年に、最低でも数回はやっているので、
集中力が養われて、記憶力もキープされているのではないでしょうか。

というわけで
父にとっての葬儀委員長という役割が、記憶力をキープさせ
彼の自尊心と自信と意欲につながっているのだと思います。

特に男性は「社会的役割」が必要ですね。

普段私は、認知症や失語症、難病の方と多く接しています。

認知症や脳梗塞などで、ハンデを負った方などは
この社会的役割も一緒に失う場合が多いです。

そうすると、意欲が低下したり、うつになったり、自分を見失ってしまうのです。

そこで音楽療法では
楽器をみんなで演奏することによって
役割を感じてもらうようにしています。

例えばひとつの曲を、いろんな楽器にわりふり
一人一人に担当してもらい合奏する。

合奏ですから、「誰かひとりかけても曲は成り立たない。」
それって、社会と同じですもんね。

いつまでも、
自分らしく誇りをもって生きることや

自分は誰かの何かの役にたっているんだと感じられることは

とても大切なことです。

これからもこの点を忘れず
セッションしていきたいと思っています。

では、
今日もあなたにとってよい一日でありますように!

音楽療法士   堀田圭江子

追伸1:
音楽療法についてもご質問や感想をコメントお待ちしています!