堀田圭江子/音楽療法セラピスト®、音楽療法士、産業カウンセラー
堀田圭江子
洗足学園音楽大学 声楽家卒業。高校教員を経て音楽療法士となる。
25年以上の音楽療法の臨床経験を生かし「音楽療法セラピスト®養成講座」を主宰。
音楽療法セラピストを志す後進の育成にもあたっている。

こんにちは。 音楽療法士の堀田です。

さて、本日は
先日、音楽療法のセッションで起きた
うれしい出来事をご紹介したいと思います。

そのうれしい出来事とは…

ある高齢者施設(特別養護老人ホーム)で セッションした時に起こりました。

その施設では、 15人前後の参加者でグループセッションを行っています。
メンバーはほぼ認知症や失語症の方々です。

▼その中に80歳代の失語症のAさんという女性がいます。

  • 彼女は、こちらの言葉は少し理解していると思われますが、
    本人は一言も話しません。なのでどこまで理解しているのかは不明です。
  • 彼女の意志は、イエスなら首を縦に振る、
    ノーは無反応と言う方法で表しています。
  • 左麻痺があり、右手を少し使うことができます。

 

私は、時間をかけてその方の表情を読み取ったり、
質問を工夫したりすることで 意思の疎通をはかれるようにしてきました。

ここ半年くらいからは タンバリンを差し出すと、
音楽に合わせて右手でたたくことができるようにもなりました。

しかし
セラピストのたたくタンバリン(リズム)を 模倣することはできませんでした。

ちなみに模倣とは
セラピストがタンタンタンと3回たたいた後に、
クライアントにも3回まねしてたたいてもらうというものです。

ですが、
先日はいつものように 「○○さん、私の真似してたたいてくださいね。」
とセラピストが言って3回たたいてタンバリンを差し出すと、
タンタンタンと3回たたいてきたのです。

「えっ!?今できたよね?」

半信半疑だったため、
もう一度リズムを変えてタタンタタンと叩いて差し出すと
タタンタタンと返ってきたのです。

「すごーいすごーい。」

スタッフ一同大喜びでした。
そして 「あきらめなくてよかった」とも強く思った瞬間でした。

これが
失語症の方がリズム模倣ができるようになった、うれしい出来事です。

 

ではここで  私と一緒にうれしい出来事が起きた理由を考えてみましょう。

彼女は脳梗塞の後遺症による失語症でした。
それも相手の話は理解できるが自分は発語できないタイプ。
その理解の程度は不明。

また右麻痺ですので、脳梗塞が起こったのは左脳だということがわかります。

音楽はどのような影響を与えて、模倣を可能にしたか?

  1. 音楽は右脳に影響を与えると言われているので
    脳梗塞のダメージを受けていない右脳に音楽が作用をした。
  2. 情動(気持ち)に直接影響を与えることもできる音楽の特性が
    模倣するときに必要な意欲や集中力を高めてくれたのではないかと考えられる。
  3. セッションを2年近く行っているため
    クライアントがその音楽や音に慣れ親しんでいる。
  4. セラピストとの信頼関係が構築されていたこと。

以上が考えられます。

このように
効果的な音楽療法(うれしい出来事)をするためには 病気や障害の理解と、
基本的な頭の中(脳)の知識も必要となります。

なぜなら、
その知識と理解があることで 「○○症でこの症状の人に、このプログラムを実践すると○○になる。」
という仮説がたてられるからです。

そして
仮説のもと実際にセッションし、その結果どのようになったかを、検証していく。

 

この繰り返しが、 効果を上げる音楽療法の基本なのです。

とはいえ 脳の勉強はなかなか取り組むには勇気がいりますよね。
医学的専門用語ばっかりな感じがして。

しかしご安心あれ。
効果的な音楽療法を実践するための脳のお話をする講座があります。

それが音楽療法セラピスト養成講座の 「脳血管障害の音楽療法」です。

難しいお話ではありません。 わかりやすくお話しますよ。

ご興味ありましたら、ぜひいらしてくださいね。
>>>脳血管障害の音楽療法

 

では、今日はこのへんで。

音楽療法士  堀田圭江子

追伸:
おかげさまで 11月の「セラピストの自己理解」は満席になりました。
(次回は3月を予定しています。)

その他の講座は、まだ空きがあります! こちらで確認して下さいね。
>>>音楽療法セラピスト養成講座のスケジュール