堀田圭江子/音楽療法セラピスト®、音楽療法士、産業カウンセラー
堀田圭江子
洗足学園音楽大学 声楽家卒業。高校教員を経て音楽療法士となる。
25年以上の音楽療法の臨床経験を生かし「音楽療法セラピスト®養成講座」を主宰。
音楽療法セラピストを志す後進の育成にもあたっている。

こんにちは。
堀田でございます。

本日は、
一歩深い観察はとても重要」についてお話します。

 

高齢者施設での利用者さんのひとりに
首が曲がってずーっと下を向いている女性の方がいらっしゃいます。

しかしこのような状態でも
お食事は自力で摂取でき
飲み込みも誤嚥せずにできているそうです。

 

その女性ですが 基本的に何もしたくないという態度でいます。

「一緒にしましょうよ」とか「1回だけどうですか」 と誘っても
「かんべんしてくださいよー」「今日はだめ」などと拒否をします。

 

セッションに参加当初は、その言葉を鵜呑みにして
セッションに来てもほとんど何もしない日がありました。

 

しかし
ある時、こんなことがありました。

太鼓をひとりずつ叩くプログラムを実施している時
彼女の真向かいの利用者さんがとても大きい音で太鼓を叩いたのです。

その時
動かないはずの首が動いて、首を持ち上げて向いの人を見たのです。

「えっ!今、顔があがった!」

私は見逃しませんでした。 セラピストは見た(笑)です。

 

その後 介護スタッフにも、
「普段の生活でも顔があがる時はないかを観察して欲しい」と頼みました。

そうすると 一日に何回は顔は上げているという事実が判明したのです。

 

「できるなこれは」
という感覚をつかんだ私は

セッションで彼女の発する言葉に振り回されることなく
治療目標に向かってまっすぐにアプローチすることが できるようになりました。

例えば
「○○さん、たいこお願いしまーす。」といって
「かんべんしてくださいよー」と返事されて撃沈するのではなく

伴奏を開始して、相手がたたきやすいタイミングでさっと太鼓を差し出すとか。

たくさんの言葉で相手を説得するのではなく
「音楽の特性を活用して相手の動きを誘発する」方が
このようなケースは効果的
だと思います。

もちろん
「首は機能的にも問題なく動く」という根拠があってのことですけど。

 

というように
クライアントさんの拒否の言葉で、活動をあきらめるのではなく、
さらに「本当にそうなのか?」という一歩深めた観察をすることで
事実を判明させアプローチの根拠にしていくということ

今日はお話させていただきました。

 

何かに活用していただけましたらうれしいです。

ということで 今日はこのへんで。

音楽療法士 堀田圭江子

追伸
6月は高齢者2からのスタートです。
先日発売の「レクリエ」に掲載中の堀田監修の音楽体操を伝授いたします。
ぜひぜひご参加くださいね。
>>>音楽療法セラピスト養成講座