堀田圭江子/音楽療法セラピスト®、音楽療法士、産業カウンセラー
堀田圭江子
洗足学園音楽大学 声楽家卒業。高校教員を経て音楽療法士となる。
25年以上の音楽療法の臨床経験を生かし「音楽療法セラピスト®養成講座」を主宰。
音楽療法セラピストを志す後進の育成にもあたっている。

音楽療法士の仕事は忍耐です。
なぜ忍耐なのか?

「クライアントの変化や反応を待ち続ける」からです。

音楽療法士は決してクライアントに対して強制しません。
(言葉でも、行動でも)

たとえばセッションの中で
自分の名前を自己紹介する場面があります。

セラピスト:○○さん、自己紹介お願いします。

クライアント:「………」

セラピスト:○○さん、お名前は?

クライアント:「………」

セラピスト:お名前なんでしたか?

クライアント「………」

セラピスト:苗字をセラピストが言い、名前の頭の1文字を言うと

クライアント「○よーこー」(みよこ)

セラピスト:「そうですね。ありがとうございます」

 

たったこれだけですが
5分かかることもあるのです。

 

こちらが言ってしまえば早いのですが
名前を自分で言うことに意味がある場合
とにかくわたしたちは待ちます。

何かを言ってくれるまで(または何かの反応がでるまで)待ちます。

でも、ただ単に待ち続けるのではなく
こちらからのアプローチもしながらなんですけどね。

認知症の重度の場合は反応が鈍くなります。

目は開いているが
声も出さず、反応も示さず。

そうなると
ひとつの動作にも時間がかかります。

でも、
とにかくあせらず気長に待ちます。

実は
普段の私はかなり早口でしゃべりますし
結果をすぐに求めるところがあります。

ですが
音楽療法の時はスローになります。

仕事のスイッチが入るんですね。

不思議と
イライラもしませんし、我慢してる感覚もありません。

音楽療法は
相手の全てを受け入れることが原則ですので
クライアントのことはじっと待っていられるのです。

ということは
ほんとは忍耐ではなく
相手のペースに寄り添っていく仕事ってことですね。