堀田圭江子/音楽療法セラピスト®、音楽療法士、産業カウンセラー
堀田圭江子
洗足学園音楽大学 声楽家卒業。高校教員を経て音楽療法士となる。
25年以上の音楽療法の臨床経験を生かし「音楽療法セラピスト®養成講座」を主宰。
音楽療法セラピストを志す後進の育成にもあたっている。

おひさしぶりです。
ちょっとご無沙汰してしまいました。

さて、本日はあるセッションでの出来事をお伝えする。
ある特別養護老人ホームで認知症対象の音楽療法。

そのグループは少人数。
男性2人と女性4人。
その中の男性2人が入院してしまい、しばらく寂しい日々だった。
男性のひとりに、Rさんという大物がいる。

彼はおしるこが大好物。
彼の重たい腰をあげるには「おしるこ」を引き合いにだすことが多い。

また、彼にとっ大切な物がある。
それは「はんこと時計」。
必ずセットでなければならない。

命より大切だともいえる。
肌身離さずいつも同行している(笑)。

音楽療法のセッション中も数回は「はんこと時計は?」と聞く。

そんな時は「フロントに預けてあるから大丈夫だよ」とお伝えすることにしている。

すると、納得する。
(彼は昔旅館のフロント係だった)

そんな彼が先日入院し、昨日退院してきた。

やったー、今日はRさんが参加だね。楽しみ楽しみ。

入室してきた彼は特別に変化もなく
自己紹介も積極的に行った。

そうして、プログラムは進み後半になった。

私は少し質問してみる事にした。
「Rさん、入院生活はどうだった?」

すると

「入院してないよ。」「外来に行っただけだ」

ええええっっっっっ。

半月は入院してたんだよー。

しかも
「外来」って(笑)。

彼の口から「外来」って言葉が出たのには驚きだった。
ボキャの幅広さに脱帽です。

彼の記憶によると外来に行って、気がついたら自分の部屋にいたらしい。

だけど
外来には行ってないし、気がついたら病室だったはず…(笑)。

しかし
そんなことはどうでもいい。

Rさんが元気に帰ってきてくれさえすれば。

そして、
退院後は、命より大切な「はんこと時計」のセットには全く振り向かなくなった。
どうしたのだろう???

そのこだわりも治してきちゃったのだろうか?

そうだとしたら、治療法を教えてほしい。