堀田圭江子/音楽療法セラピスト®、音楽療法士、産業カウンセラー
堀田圭江子
洗足学園音楽大学 声楽家卒業。高校教員を経て音楽療法士となる。
25年以上の音楽療法の臨床経験を生かし「音楽療法セラピスト®養成講座」を主宰。
音楽療法セラピストを志す後進の育成にもあたっている。

こんにちは、堀田です。

さて本日は
音楽療法を始めた頃は、
「途方にくれることが多かった」
よねっていうお話しです。

おかげさまで
音楽療法は20年くらいセッションさせていただいております。

そして
今はセッションを楽しくできるようになりました。

でも
初心者の時は失敗だらけで地獄だったような気がします。

なぜなら
私が音楽療法を始めた頃は、
音楽療法を学べる所はとても少なく
実践者も少なく、、、、

セッションで困った時などは
誰にも相談できず、ネットでも情報は少なく
(その頃はインターネットもあまり使われていない)

途方にくれることが多かったと記憶しています。

例えばこんなことがありました。

ある失語症の方が参加している10人くらいの小集団のセッションで
その失語症の方へ発語を促すために
歌を唄うプログラムを考えて実践してみました。

その方は
他人の話は理解できるが、自分はなかなかスムーズに発語できない方でした。

でも
歌はスムーズに歌える。

私は
「歌が好きならば、たくさん歌った方が発語しやすくなるかもしれない」

という考えのもと
失語症の方の好きな歌謡曲を含め、
1セッションで8曲くらいは唄うようにプログラムしました。

もちろん
他にも、体操や簡単な楽器などもプログラムに入れましたので
結構盛りだくさんで忙しい内容になりましたが、
失語症の方も笑顔で参加されていたので
私は発語が増えるかなと期待しておりました。

そのようなセッションを2回実施しました。

しかし3回目のセッションに、その失語症の方は参加しませんでした。

私は
欠席の理由を考えました。
「あの人の好きな歌謡曲も取り入れたし、
本人も全部じゃないけど歌っていたし、何がいけなかったのであろう」

でも
その当時の私には分析力も分析するのに必要な知識もなく、
相談できる人もいませんでした。

まさに途方にくれてしまったという感じ。

そんな中
ある講演会(作業療法の先生)を聞きに行った時
その先生がご自分のクライアントさんの実例をお話しくださっていました。

それが、たまたま失語症の方だったのです。

こんな話しでした。

ある失語症の方と作業療法をしながら雑談をしていたそうです。

ついつい
その失語症の方のことをもっと知りたい、話しをしたいという欲がわいてきて
「◯◯さんは、花が好きですか?」「コーヒーと紅茶どっちが好きです?」
などと質問ぜめにしてしまったそうです。

そうしたら
翌日からその先生を避けるようになったとか。

先生いわく
「私がしつこくしたから、嫌われたんですね(笑)」とおっしゃっていました。

このお話しを聞いた時
私は「ハッ」としました。

「ああ、私のクライアントさんも、これだったのか」と。

私の音楽療法に参加されていた失語症の方が来なくなった理由は
「セッションで唄う曲数が多すぎて、疲れたのだ」と思いました。

後日
そのクライアントさんに
「◯◯さん、あんなにたくさん歌ったら疲れちゃいますよね。
今度は疲れない程度に歌いますからぜひどうぞ。」

といいました。

それからは
その失語症の方はまた参加してくれるようになったのです。

今から考えると
「そんなことセラピストなら想像つくでしょう」と思いますが
当時は本当に想像つきませんでした。

自分で同じことを考えていても堂々巡りしてしまい
ゴールにたどり着けないこともありますね。

そんな時、
解決のポイントは
「他人から聞く」または「角度を変えて話しを聞く」ことかもしれません。

ということで、、、
あなたが、現場のレクや担当している時間や、今のお仕事で
「これってどうなの?」「なんかしっくりこない」「なんか足りない」などと
お悩みの最中でしたら、ぜひ他の人の実際の例を聞いてみることをおすすめします。

それと
実際の音楽療法の実例をわかりやすくお話ししていく
音楽療法セラピスト養成講座の「事例研究」も活用してください!

解決のヒントとなるものが見つかります。

それでは、このへんで。

音楽療法セラピスト 堀田圭江子